取扱説明書に関わるJISの一覧 分野別の主な規格と、その関係

取扱説明書に関わるJISの一覧 分野別の主な規格と、その関係

取扱説明書の制作では、製品の分野によって、参照するJISが変わります。家電なら消費者向けの指針、産業機械なら機械安全の規格、警告ラベルなら安全標識の規格、といった具合です。

この記事では、取扱説明書に関わる主なJISを分野ごとに整理し、それぞれの位置づけと関係を紹介します。2026年8月に制定された取扱説明書の新JIS「JIS Z 82079-1」を中心に、全体像をつかむための地図として使っていただければと思います。

JISの記号の読み方

JISの規格番号の頭にあるアルファベットは、規格の分野(部門)を表しています。取扱説明書に関わるものでは、次の部門がよく出てきます。

記号 部門
B 一般機械
C 電子機器・電気機械
S 日用品
X 情報処理
Z その他(特定の分野に属さない、共通の規格)

あらゆる製品に共通する新JISが「Z」の部門に入っているのは、特定の製品分野に限らない規格だからです。

主なJISの関係

取扱説明書に関わる主なJISの関係図。中心にJIS Z 82079-1、周りに消費者向け製品(JIS S 0137、JIS S 0101)、機械(JIS B 9700、JIS B 9719)、電気製品(JIS C 9335)、安全標識(JIS Z 9101)、土台にJIS Z 8051とJIS Z 8071

図 取扱説明書に関わる主なJISの関係(テクニカルらいたー作成)

中心にあるのが、分野を問わない新JIS(JIS Z 82079-1)です。そのまわりに、消費者向け製品、機械、電気製品といった分野ごとの規格や、警告の表示に関わる規格があり、さらにその土台として、安全やアクセシビリティについての考え方を示した指針があります。

すべての製品に共通する規格

JIS 内容 もとになった国際規格
JIS Z 82079-1:2026 製品の使用情報(使用説明)の作成の原則と一般要求事項。2026年8月20日制定 IEC/IEEE 82079-1:2019(一致)
JIS C 0457:2006 旧JIS。電気分野の取扱説明の作成の規格。2026年8月20日に廃止 IEC 62079:2001

新JISは、家電、機械、ソフトウェアなど、分野を問わずあらゆる製品の使用情報に共通する規格です。取扱説明書だけでなく、本体の表示やWebの情報も含めた「使用情報」全体を対象にしています(詳しくは「JIS Z 82079-1で取扱説明書の何が変わる?」で紹介しています)。

消費者向けの製品(家電・日用品)

JIS 内容 もとになった国際規格
JIS S 0137:2000 消費生活用製品の取扱説明書に関する指針。今も有効 ISO/IEC Guide 37:1995(一致)
JIS S 0101:2000 消費者用警告図記号。2018年に追補 —

JIS S 0137は、家電や日用品など、消費者が使う製品の取扱説明書についての指針です。記載箇所、読みやすさ、表現、警告表示、取扱説明書の評価まで、幅広い項目を扱っています。JIS S 0101は、消費者向けの製品や取扱説明書で使う、禁止・注意・指示などの図記号を定めています。(JIS S 0137については「JIS S 0137とは」で詳しく紹介しています)

機械

JIS 内容 もとになった国際規格
JIS B 9700:2013 機械類の安全性の設計のための一般原則。リスクアセスメントとリスク低減、使用上の情報 ISO 12100:2010(一致)
JIS B 9719:2022 機械類の取扱説明書の作成のための一般原則。取扱説明書の安全に関わる部分 ISO 20607:2019(一致)

JIS B 9700は、機械安全の基本となる規格で、設計、安全防護、使用上の情報という3つの段階でリスクを減らす考え方を示しています。JIS B 9719は、その使用上の情報のうち、取扱説明書について詳しく定めた規格です(詳しくは「機械の取扱説明書に関わるJIS」で紹介しています)。

機械安全の規格には、次の3つの階層があります。

階層 内容 例
タイプA(基本安全規格) すべての機械に適用できる基本的な考え方や設計原則 JIS B 9700
タイプB(グループ安全規格) 広い範囲の機械に共通する安全面や安全防護物 JIS B 9719(取扱説明書)、非常停止、安全距離などの規格
タイプC(個別機械安全規格) 特定の機械や機械群についての詳しい安全要求 個別の機械の規格

下の階層ほど内容が具体的になり、特定の機械についてのタイプC規格がある場合は、そちらが優先されます。

電気製品

JIS 内容 もとになった国際規格
JIS C 9335シリーズ 家庭用及びこれに類する電気機器の安全性。第1部の箇条7が「表示及び取扱説明」 IEC 60335シリーズ

家電製品の安全規格の中にも、製品の表示や取扱説明書に関する要求があります。製品ごとの規格(第2部)で、さらに個別の要求が加わることもあります。

安全標識・図記号

JIS 内容 もとになった国際規格
JIS Z 9101:2018 安全色及び安全標識の設計原則 ISO 3864-1
JIS Z 9103:2018 安全色の色度の範囲と測定方法 ISO 3864-4

警告ラベルや取扱説明書の中で使う安全標識の、色や形の考え方を定めた規格です。なお、機械の取扱説明書では、登録された安全標識の国際規格ISO 7010も参照されます。

安全とアクセシビリティの考え方

JIS 内容 もとになった国際規格
JIS Z 8051:2015 安全側面を規格に導入するための指針。リスクや残留リスクの考え方 ISO/IEC Guide 51:2014(一致)
JIS Z 8071:2017 規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針 ISO/IEC Guide 71:2014

これらは本来、規格を作る人に向けた指針ですが、取扱説明書の考え方の土台になっています。「危険を設計で減らし、残るリスクを情報で伝える」という考え方や、高齢者や障害のある人を含めて、多様な人が使うことへの配慮は、ここから来ています。

Webマニュアル

JIS 内容 もとになった国際規格
JIS X 8341-3:2016 ウェブコンテンツのアクセシビリティ ISO/IEC 40500:2012(一致)。技術的にはWCAG 2.0と同じ内容

Webで取扱説明書を提供する場合は、ウェブコンテンツのアクセシビリティの規格も関わってきます(Webマニュアルについては「取扱説明書だけが「使用情報」じゃない」でも紹介しています)。

製品の分野ごとの組み合わせ

実際の取扱説明書の制作では、いくつかの規格を組み合わせて参照します。

  • 家電:JIS Z 82079-1 + JIS S 0137 + JIS S 0101 + JIS C 9335シリーズ(製品ごと)
  • 産業機械:JIS Z 82079-1 + JIS B 9700 + JIS B 9719(+厚生労働省の残留リスク情報の指針)
  • 警告ラベル:JIS Z 9101 + JIS S 0101(消費者向けの製品の場合)

どの規格に沿って作るかは、製品の種類や販売先によって変わります。また、JISは任意の規格で、法令で引用されている場合などを除き、従うことが法的に義務づけられているわけではありません。

まとめ

  • 取扱説明書に関わるJISは、製品の分野によって異なる
  • 中心にあるのは、あらゆる製品に共通する新JIS(JIS Z 82079-1)
  • 家電はJIS S 0137やJIS C 9335シリーズ、機械はJIS B 9700とJIS B 9719など、分野ごとの規格を組み合わせる
  • 安全標識やアクセシビリティの規格、安全についての指針も、取扱説明書の土台になる

JISの最新の版や内容は、日本産業標準調査会の「JIS検索」で確認できます。

当方では、製品の分野に合わせた規格を踏まえて、取扱説明書の制作や見直しに対応しています。お気軽にお問い合わせください。


※各規格の版は、2026年10月時点で確認したものです。改正や廃止の状況は、日本産業標準調査会のJIS検索などで最新の情報をご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の製品の法令適合性を保証するものではありません。

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