JIS S 0137とは 消費者向け取扱説明書の指針と、新JISとの関係

JIS S 0137とは 消費者向け取扱説明書の指針と、新JISとの関係

当方では、一般消費者向けの製品の取扱説明書は、基本的にJIS S 0137の内容を参考にして作っています。2000年に制定された古い規格ですが、文字の大きさや書き方などが具体的に書かれていて、今でも参考にしやすい規格です。

2026年8月に取扱説明書の新JIS「JIS Z 82079-1」が制定された今、JIS S 0137をどう位置づければよいのか。この記事では、JIS S 0137の内容と、新JISとの違いや使い分けを紹介します。

JIS S 0137とは

JIS S 0137:2000「消費生活用製品の取扱説明書に関する指針」は、2000年11月に制定されたJISです。その後、2006年、2010年、2015年、2020年に「確認」(内容を変えずに存続させること)を受けていて、今も有効な規格です。

この規格は、国際的な指針ISO/IEC Guide 37:1995(第2版)を、技術的な内容を変えずに日本語にした一致規格です。規格番号の頭の「S」は、JISの部門のうち「日用品」を表しています。

対象は、家電や日用品など、消費者が使う製品の取扱説明書です。製品本体への表示、包装への表示、取扱説明書などの添付物も含まれます。製品を設計する人、取扱説明書を作る人、製品の規格を作る委員会などが、取扱説明書の構成や作成の原則として使うことを想定しています。

何が書かれているか

JIS S 0137は「指針」なので、多くの項目が「〜することが望ましい」という形で書かれています。主な項目は次のとおりです。

  • 一般原則:取扱説明書は製品を渡すときに欠かせないもの、など
  • 記載事項:製品の規格に、取扱説明書に記載すべき事項を定めておくこと
  • 記載箇所と記載方法:製品本体、包装、取扱説明書のどこに、何を表示するか
  • 購入時に伝える情報:購入を決める前に知っておくべき情報(使用年齢の制限など)
  • 作成と構成:読みやすさ(文字の大きさなど)、色、情報伝達の原則、表現方法と専門用語、言語、イラスト、シンボルマーク、表、フローチャート、目次と索引、点検・修理
  • 警告表示:危険・警告・注意の段階的なシグナルワード、目立たせ方
  • 視聴覚信号:光の点滅やブザーによる通知と警告
  • 取扱説明書の耐久性:製品を使う期間を通して読めること
  • 附属書A(参考):取扱説明書の評価(専門家による机上評価と、使う人の代表による対話式パネル試験)

文字の大きさの目安なども示されていて、取扱説明書を作る立場から見ると、具体的で参考にしやすい内容になっています。

新JISと共通する考え方

1995年の国際的な指針がもとになっていますが、新JIS(JIS Z 82079-1)と共通する考え方も多くあります。

  • 取扱説明書は、設計の欠陥を補うものであってはならない
  • 合理的に予見できる誤使用も考える
  • 使う人が誰で、どのような能力の人かを考える
  • 製品本体、包装、取扱説明書のどこに表示するかを考える
  • 作った取扱説明書を評価して確かめる

特に「取扱説明書は設計の欠陥を補えない」という考え方は、新JISにもほぼ同じ形で書かれています(詳しくは「取扱説明書の安全注意は、何のためにあるのか」で紹介しています)。

新JISとの違い

JIS Z 82079-1(新JIS) JIS S 0137
対象 あらゆる製品の使用情報 消費生活用製品の取扱説明書
もとになった国際規格 IEC/IEEE 82079-1:2019 ISO/IEC Guide 37:1995
性格 要求事項(「〜しなければならない」が中心) 指針(「〜することが望ましい」が中心)
主な中身 使用情報の原則と内容、媒体、作り方のプロセス、作り手の力量、評価 一般原則、記載箇所、読みやすさ、表現、警告表示、耐久性、評価

新JISは、家電から機械、ソフトウェアまで、あらゆる製品の使用情報に共通する規格で、作り方のプロセスや作り手の力量まで扱います。これに対してJIS S 0137は、消費者向けの製品に絞り、取扱説明書の書き方や見せ方を具体的に示した指針です。

Webについての記述はない

JIS S 0137は2000年の規格なので、Webの取扱説明書やアプリについての記述はありません。それでも、紙の取扱説明書の需要は今も多くあるので、十分に活用できると考えています。

なお、もとになった国際的な指針ISO/IEC Guide 37は、2012年に第3版が出ています。第3版では、次のような変化を踏まえて全面的に改訂されました。

  • 取扱説明書についての国際規格(IEC 82079-1)ができたこと
  • 個人輸入なども含めて製品が国境を越えるようになり、消費者が販売国の公用語を読めるとは限らなくなったこと
  • 高齢の消費者や障害のある消費者の中に、文字が小さすぎて情報を読めない人がいること

そのため第3版では、メーカーのWebサイトでの取扱説明書の提供や、電子形式での提供についての記述が加わり、文字の大きさの目安も高齢者などを考えて見直されています。音声や大きな文字など、別の媒体で情報を得られるようにすることも勧めています。

一方、JIS S 0137は第3版に合わせた改正は行われておらず、1995年の第2版にもとづく内容のままです。JIS S 0137を参考にするときは、こうした国際的な指針の変化もあわせて知っておくと役に立ちます。

日本語ならではの書き方は

JIS S 0137は国際的な指針の翻訳で、もとの指針は英語を念頭に書かれています。そのため、日本語に特化した書き方まではあまり踏み込んでいません。

JISとして追加されている部分もあり、たとえば、能動態を使う、明確に言い切る、といった表現の原則には、日本語の良い例と悪い例が添えられています。ローマ字以外の文字についても、ローマ字と同等の大きさにすることが望ましい、という補足があります。ただ、漢字とひらがなの使い分け、送り仮名、カタカナ語の表記のような、日本語ならではのルールは扱っていません。

日本語の表記を考えるときは、文化審議会の「公用文作成の考え方」(2022年)のような、日本語の書き方についての資料もあわせて参考にしています(言葉づかいについては「「十分に洗浄」が「10分洗浄」に?」でも紹介しています)。

新JISが出た今、どう使い分けるか

新JIS(JIS Z 82079-1)が制定されても、JIS S 0137が廃止されたわけではありません。当方では、新JISを取扱説明書づくり全体の土台とし、JIS S 0137は一般消費者向けの取扱説明書のガイドラインとして、引き続き使っていきます。

新JISで「何を、どのような体制で作るか」を押さえ、JIS S 0137で「消費者にどう見せ、どう書くか」を具体的に考える。そうした組み合わせが、今の消費者向けの取扱説明書づくりには合っていると考えています。

まとめ

  • JIS S 0137は、消費生活用製品の取扱説明書に関する指針。ISO/IEC Guide 37:1995と一致し、2000年に制定されて今も有効
  • 文字の大きさや書き方などが具体的に書かれていて、消費者向けの取扱説明書づくりで参考にしやすい
  • 「設計の欠陥は補えない」「予見できる誤使用を考える」など、新JISと共通する考え方も多い
  • Webについての記述はないが、紙の取扱説明書には今も十分活用できる。国際的な指針は2012年の第3版で見直されている
  • 新JISを土台に、JIS S 0137を消費者向けのガイドラインとして使い分ける

取扱説明書に関わるほかのJISは「取扱説明書に関わるJISの一覧」、新JISの全体像は「JIS Z 82079-1で取扱説明書の何が変わる?」で紹介しています。

当方では、JIS S 0137や新JISを踏まえた、消費者向けの取扱説明書の制作や見直しに対応しています。お気軽にお問い合わせください。


※JIS S 0137の内容は、JIS S 0137:2000の本文をもとに、ISO/IEC Guide 37の第3版の内容は、ISO/IEC Guide 37:2012をもとに要約しています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の製品の法令適合性を保証するものではありません。

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