取扱説明書だけが「使用情報」じゃない 本体ラベルからWeb・動画まで

取扱説明書だけが「使用情報」じゃない 本体ラベルからWeb・動画まで

当方で制作しているものは、今でも紙の取扱説明書がいちばん多いのですが、最近はWebの取扱説明書が増えてきました。補足の資料として動画を作ることもありますし、必要に応じて本体に貼る注意ラベルも作ります。

2026年8月に制定された取扱説明書の新JIS「JIS Z 82079-1」は、こうした取扱説明書以外のものも含めて「使用情報」として扱っています。この記事では、紙、ラベル、Web、動画をどう考えればよいのかを、現場の経験とあわせて紹介します。

新JISの「使用情報」とは

新JIS(JIS Z 82079-1)のもとになった国際規格IEC/IEEE 82079-1では、使用情報を、製品をその一生を通じて安全に、効果的に、効率よく使うために、供給者が提供する情報と定義しています(3.17)。操作の手順だけでなく、トラブルへの対処、保守、組立ての説明なども含まれます。

この規格は、使用情報を1冊の取扱説明書にまとめる場合だけでなく、製品本体や包装の表示、Webサイト、動画など、いくつもの媒体に分けて提供する場合も対象にしています。どの媒体を使うかは、紙か電子か、製品そのものに付けるか、包装に付けるか、別に提供するかも含めて、使う人のことを考えて選ぶものとされています(6.2.3)。

つまり、取扱説明書は使用情報のひとつにすぎない、ということです。

本体のラベルが担う役割

危険な箇所は、取扱説明書に書くだけでなく、ラベルにして本体に貼るのが一番伝わりやすい、と私は考えています。取扱説明書は、使うたびに開くものではないからです。

乳児用ベッドガードの事故をめぐる裁判(東京地裁 2024年3月22日判決)では、使用対象年齢の表示が取扱説明書と外箱にしかなく、本体にはなかったことなどから、指示・警告上の欠陥が認められました(詳しくは「取扱説明書の安全注意は、何のためにあるのか」で紹介しています)。どこに表示するかも、伝わるかどうかを左右するのです。

一方で、ラベルに書いてある内容は、取扱説明書にも載せておく必要があります。ラベルは、はがれたり汚れたりすると、そこにあった情報が失われてしまうからです。新JISも、製品を使う期間中にラベルの貼り替えが必要になる場合は、ラベルの位置と貼り替えについての情報を示すよう求めています(7.10.13.2)。

ラベルと取扱説明書が食い違う

現場でよく見かけるのが、ラベルと取扱説明書の食い違いです。

ラベルは取扱説明書と連動して作られていないことが多く、同じ危険についての文言や、注意喚起のレベルが異なっていることがよくあります。取扱説明書では「警告」なのに、ラベルでは「注意」になっている、といった具合です。ラベルは製品の設計部門、取扱説明書は別の部門や外部の制作会社、と作り手が分かれていることも、食い違いが起きる理由のひとつだと思います。

新JISは、使用情報を、内容、形式、媒体のどれについても一貫させることを求めています(5.3.6)。また、使用情報を計画し、作り、維持していくための情報管理のプロセスを持つことも求めています(6.1)。紙の取扱説明書も、本体のラベルも、Webの情報も、ばらばらに作るのではなく、ひとつの「使用情報」としてまとめて管理する必要があるということです。

紙とWeb、それぞれの強み

Webの取扱説明書は、検索性に優れています。二次元コードやURLから、知りたい情報の場所に直接移動できるのも、とても便利です。

その反面、紙の取扱説明書は、その場でさっと開いて見られますし、全体を見渡せる一覧性があります。電波の届かない場所では、そもそもWebを見ることができません。

どちらが優れているというより、場面に応じて使い分けるのがよいと考えています。新JISも、紙の使用情報は、製品を使う期間を通して使えるようにすること、そして使う人に保管を呼びかけることを求めています(6.2.3、7.3)。Webに移せば紙はいらない、という単純な話ではありません。

動画は「補完」の役割

動画は、動きや手順がひと目でわかるので、とてもわかりやすい媒体です。

ただ、すべての情報を動画で網羅できるわけではありません。細かな条件や注意事項まで動画に入れようとすると、画面が文字だらけになってしまいます。文字だらけの動画は、誰も見ません。

そのため、動画はあくまで補完的な情報と考えています。動画でわかりやすく見せたうえで、必要な情報は結局、文章で伝える必要があります。

まとめ

  • 新JISは、取扱説明書だけでなく、本体のラベル、包装、Web、動画なども「使用情報」として扱う
  • 危険な箇所はラベルにして本体に貼るのが伝わりやすい。ただし、はがれたときのために取扱説明書にも載せる
  • ラベルと取扱説明書は食い違いやすい。媒体をまたいで一貫させ、ひとつの使用情報として管理する
  • Webは検索性、紙は一覧性。場面に応じて使い分ける
  • 動画はわかりやすいが補完的な情報。必要な情報は文章で伝える

新JISの全体像は「JIS Z 82079-1で取扱説明書の何が変わる?」で解説しています。

当方では、紙の取扱説明書に加えて、Web取扱説明書や注意ラベルの制作にも対応しています。お気軽にお問い合わせください。


※規格の内容は、IEC/IEEE 82079-1:2019(日本規格協会の和訳)をもとに要約しています。JIS Z 82079-1:2026の本文とは訳語が異なる場合があります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の製品の法令適合性を保証するものではありません。

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