なぜテクニカルライターが必要なのか メーカーとユーザーの架け橋として

なぜテクニカルライターが必要なのか メーカーとユーザーの架け橋として

テクニカルライターというと、文章を書く人というイメージを持たれることが多いかもしれません。けれども、取扱説明書の作成を依頼してくださるメーカーの方が期待しているのは、文章を書く作業だけではないように思います。

テクニカルライターは、製品をつくるメーカーと、製品を使うユーザーをつなぐ「架け橋」のような存在であるのが理想的だと、私は考えます。

この記事では、メーカーが取扱説明書の作成をテクニカルライターに頼む理由と、実績のあるテクニカルライターに期待できる力を紹介します。

メーカーとテクニカルライターは、役割が違う

メーカーの人は、製品の構造、設計の意図、技術的な制約に詳しい人たちです。一方、テクニカルライターは、製品を知らない人が何を知らず、どこで迷い、どう誤解するかを調べて、説明を組み立てます。

どちらが優れているということではなく、役割が違うのです。

メーカーが求めているのは「外部の目」

メーカーがテクニカルライターに頼む理由は、単に工数を減らしたいからだけではありません。「外部の目がほしい」というニーズも多くあります。

製品の開発に関わる当事者になると、どうしても思い込みや先入観が混じってしまいます。初心者の視点から製品を見つめ直すことが、難しくなってしまうのです。テクニカルライターは、取扱説明書づくりに「ユーザーの目線」を持ち込む役割も担っています。

実績のあるテクニカルライターに期待できる力

実績のあるテクニカルライターに期待できるのは、主に次の4つの力だと考えています。

「わからない」を、具体的な確認事項に変えられる

初心者でも「ここがわからない」とは言えます。専門家は、そこから原因を切り分けます。たとえば「ふたを確実に閉めてください」という説明なら、閉まったことを何で確認できるのか、半分閉まった状態でも動いてしまうのか、閉まらないときはどうすればいいのか、を確かめます。文章を直す前に、説明に必要な事実が足りているかを見つけるのです(くわしくは「AIで取扱説明書は作れる?」で紹介しています)。

製品の機能を、使う人の行動の順番に組み替えられる

設計や仕様の区分と、使う人が知りたい順番は、一致するとは限りません。「各部の名前と機能」を網羅していても、「初めて使うとき、何から始めればいいのか」がわからない取扱説明書はできてしまいます。

そこで、準備、操作、結果の確認、うまくいかなかったときの対処までを、使う人の目的に沿ってつなぎます。そのためには、文章力に加えて、情報の順序や配置を決める力が必要です。

過去の経験を、新製品への問いとして使える

経験が役に立つのは、以前の文章を流用できるからだけではありません。「この着脱の構造は、取り付けが完了したことが伝わりにくいかもしれない」「この名前は、別の部品と混同されそうだ」と、確認すべき点に早く気づけることにあります。

ただし、過去の製品と同じだと決めつけず、実物やメーカーへの確認で裏づけるところまでが専門性です。

自分が理解できたことと、読む人が理解できることを区別できる

テクニカルライター自身も、作業を進めるうちに製品に慣れてしまいます。だからこそ、「初心者の気持ちになったつもり」で終わらせず、実際に使う人に操作してもらうなどして、説明が伝わるかを確かめます。

2026年8月に制定された取扱説明書の新JIS「JIS Z 82079-1」でも、取扱説明書を作る人に必要な力量や、使う人に試してもらって確かめる評価の方法が扱われています。取扱説明書づくりは、文章を書くことだけでは完結しないのです(新JISの力量については「製品に詳しい人が、わかりやすい取扱説明書を書けるとは限らない」で紹介しています)。

原稿どおりに作るだけではない

メーカーから支給された原稿を、そのまま整えて取扱説明書にするだけなら、テクニカルライターに頼む価値はその範囲にとどまります。

取扱説明書を作る途中で、製品のわかりにくさや、説明の足りないところに気づくこと。それ自体が、テクニカルライターの仕事の価値です。いただいた原稿どおりに作るのではなく、必要な情報を足し、余計な情報を削り、より安全で、よりわかりやすい形にして伝えることが仕事だと考えています。

頼んで変わること

テクニカルライターに頼んだ効果として、数字で表れやすいのは、問い合わせの件数が減ることです。社内では当たり前になっている前提や、部署ごとに分かれた情報の抜けを見つけて、使う人に向けてまとめることで、問い合わせや誤った操作、制作のやり直しを減らすことが期待できます。

また、しっかりとした取扱説明書ができたことで、製品を世に出す実感が湧いてきた、という声を聞いたこともあります。取扱説明書は、それまで「社内のこと」だった新製品が、市場に出ていくときの道しるべの役割も果たしているのだと思います。

AIの時代にも、テクニカルライターは必要か

AIを使えば、取扱説明書の体裁は短時間で作れるようになりました。「テクニカルライターはAIでなくなるのでは」という声もあります。

けれども、AIが得意なのは、与えられた情報から文章を組み立てることです。実物に触れて使う人の戸惑いを見つけ、書くべき事実を確かめることは、少なくとも今のところ、人にしかできません。文章を整える作業はAIに任せられるようになっても、メーカーとユーザーの間に立って、伝えるべきことを見つける役割は残ると考えています(くわしくは「AIで取扱説明書は作れる?」で紹介しています)。

まとめ

  • メーカーは製品の構造や設計意図に、テクニカルライターは使う人がどこで迷うかに詳しい。役割が違う
  • メーカーがテクニカルライターに求めているのは、工数の削減だけでなく「外部の目」「ユーザーの目線」
  • 実績のあるテクニカルライターには、「わからない」を確認事項に変える、使う人の順番に組み替える、経験を問いに変える、伝わるかを確かめる、という力が期待できる
  • 頼んだ効果としては、問い合わせの減少が数字に表れやすい
  • AIで体裁は作れても、メーカーとユーザーの架け橋として、伝えるべきことを見つける役割は残る

取扱説明書の作成を外注するときの流れは「取扱説明書の作成を外注するときの流れと、依頼前に準備しておきたいこと」で紹介しています。

当方では、メーカーとユーザーの架け橋として、取扱説明書の新規作成から見直しまで対応しています。お気軽にお問い合わせください。

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